黒の教団というものは不可思議で、どこか歪な人間と踏み外した倫理でできあがってるだけの新興宗教団なのだと養父は云っていた。
そんなことを知っている養父の方が人外魔境だと思った。
詐
欺
師
の
ペ
テ
ン
巷で評判のレストランに親子連れ一組ご来店。
「アレン!」
「なに」
なにやら意気込む父親にお子様は酷く冷徹に促す。
「世の中にはいろんな人間がイル」
「うん」
「例えばー、不老不死だったり!ロリショタだったり、鬼畜だったり、絶倫…」
「マナ」
このお子様はとっても捻くれているけど、この教えはオカシイのだというのは安易に解る。養父が変人なのは身に沁みているからだ。
しかし、ここは公衆の面前。
演説なのかというほどの声量はきっと、好ましくない。その内容の如何わしさも。
「なんだい?アレン」
「…『不老不死』だったり?」
彼の興味はひたすらに、一定しない。
無視さえしなければ大概の場合、この方向転換はうまくいく。
「そう、不老不死だったり。…悪魔だったり、悪魔払いの祈祷師だったり?」
「多種多様だね」
「だからね、アレン。将来の職業選択に困らないように、 詐 欺 師 になりまショウ!」
「ペテンはアンタだろーが」
好奇心の塊、というか。
やりたいことだけして生きてる人間の代表格である養父は、興味があるものに手を出してすぐに飽いてしまうから、なんでもできる。
その末路が詐欺師。
「二世を狙ってるっていうのも本音だけど、詐欺師はイイヨー。お金に困らない・老若男女にモテル・人生愉しい、…ホラ!なんてスバラシイ!!」
「お金は騙し取るんだし、老若男女は騙すカモなだけ」
しかもこの詐欺師はペテンを生業、としているのに賭博のサクラと道化のバイトがお気に入り。
それはもう、人生愉しいだろうよ。
「でもスバらしく愉快爽快で笑いが止まらないもん」
「マナはなにしても、ご機嫌麗しいくせに」
「………………」
「………………」
「アレンは鬱々してるくせにッ!」
「マナが躁だからイイのッ!」
睨み合うこと数秒。
飽きてしまった養父は、テーブルに驚愕の事実があったと云わんばかりの形相で訴える。
「ねえ、どうしてボクのキムチがないの?」
「ごちそうさまでした」
「アレン…!こっち側はボクのだヨ!?」
「こっちってドッチー?」
「だからコッチ!」
そう云って、両腕で空の皿を囲う。
空っぽなのは、もったいないお化けがでないように自分がしっかりばっちり完食したからだけども。
「また、頼めばいいじゃん」
「や・だ!ボクはアレンが食べちゃったキムチがイイの!!」
涙目で切実と駄々を捏ねる男に辟易しながらも、白いフリルエプロンのおねえさんが「いらっしゃいませ〜」と迎えたお客に眉を顰める。
「マナ」
「ボクのをアレンが〜…!!」
「ほらマナ、置いてくよ」
「なんで!?」
「だって悪趣味な黒服連中の下っ端がいるし」
「使い捨てなんて放っとけ。それよりもボクの、」
幾分か抑えた音の言葉もなんのその、未だに粘る執念深さ。
漬物一品などに意固地になられて、新興宗教に関わりたくはないのに。
「でもアレンが見つかるとめんどくさいんだろ?ってことでバイバイ、マナ」
冷たく突き放せば、自分に盲目気味な養父は容易に操縦可能だ。
「ああっ!アレン待ちなさい!」
会計の手間すら、鬱陶しいのかテーブルのお片づけにやってきたチャイナドレス(ミニスカ)姿のおねえさんに適当な金額を押し付け養父は追いかけてくる。
やっぱ・チョロイなあ、なんていう内心はやっぱり裡に秘めて、目に入った屋台に狙いを定める。
「待っててあげてるから、そこの焼き栗買ってー」
「お安い御用だよー」
おねえさんの慌てたかわいらしい声を遠くに聴きながら、料理店から辞した。
「ねえ、マナ」
「ンー…?」
「あのレストランって中華だったの?」
「さあ?無国籍カナ」
おいしかったから、いーんだけどさ。