おはよう。今日のごきげんは?
「朝になったから起きなきゃいけないのっておかしいよな」
「莫迦なことばっかり云ってないで、ほらさっさと顔洗って椅子に座って食事を摂りなさい」
「・・・・・・アル、朝から元気だなー」
「朝だから元気なんだけど。・・・いい加減にベッドになつくの止めないと、」
「起きまス。顔洗ってきまス。だから包丁投げないでクダサイ・・・!」
今朝も師匠仕込みの起床方法で目覚めたエドワードは日に日に主婦か母親と化していく弟の朝食を嚥下した。
グリーンサラダ、ジャガイモのポタージュにカットされたフルーツたち。半熟の目玉焼きとベーコンに添えられたキノコのソテー。
・・・本当に完璧な食事から、兄は普段の不摂生を弟の無言の食卓からひしひしと感じる。
本日の予定としてエドワードは研究所からお呼びがかかっており、非常に億劫なのだ。
自分の考えをすべて理解されるなんてことは望まないから、せめてもうちょっとだけでも自分たちで考えて欲しい。
「せっかく非番なのにー・・・」
しかも、恋人との滅多にないデートが流れてしまったことで億劫さが憂鬱さに変わっていく。
次にそれは無能極まりない大佐殿へと怒りの矛先が向く。だって彼女とずっといっしょにいる。このくらいの恨みは当然だろう。
鬱が入った愚痴雑じりのコーヒーは殊更、苦かった。
*
寝起きがすばらしいくらいに悪くて、愛犬すらも近寄らないベッドルームで勤勉な目覚まし時計は撃ち抜かれた。
毎度のことだから近所迷惑を考えてサイレンサー付きであるのが救いか。
享年2ヶ月と少し。目覚まし時計だった残骸は見事に原型を留めていない。
「──あ、サ・・・?」
しかしながら部屋の主は目覚めさせたのだからきっと目覚まし時計も本望だったろう。草葉の陰で複雑な心境に違いない。
そんなことは露知らず、彼女はどうにか起き上がる。
ぐらぐらと視界なのか脳味噌なのかが揺らぐなかで恐怖のベッドルームから洗面所へ。そして一人掛け用のソファに放置された軍服やら何やらを着込んでいるときに気付く。
「・・・非番だわ」
彼女はよくやる寝起きの失敗を繰り返したことに舌打ちする。曰く、どうして起きちゃったのよ、と寝汚さ満点の不満だ。
それもこれも無能な上司の所為だろう。休日が久しぶり過ぎて、折角の非番に軍服を着込んでいる。腹立だしいったらない。悔しいから今度、意外と甘党なあの上司に塩入りココアを淹れてやる。
大体、非番の前夜から当日までは大抵の場合は恋人がいっしょでこんなミスはない。
だのに本日は研究所だとかに呼ばれて調べなきゃならないこともあるとかでリザのアパートに来れなかったのだ。
「起きちゃったのにー・・・」
愚痴っても応える者はいない。
ただ、愛犬だけがご主人さまのご機嫌に右往左往していた。
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